親の施設を探し始めると、特養、老健、サ高住、有料老人ホーム——名前が似ていて違いが分からないまま資料を集めることになります。しかしこの4つは目的も費用も入居条件もまったく別物で、選び方を間違えると「申し込んだが入居できない」「数か月で退去を求められた」といったことが起こります。本記事では、要介護度と費用でどこが候補になるかを先に絞り込めるよう整理します。
まず全体像
大きく公的施設と民間施設に分かれます。ここを押さえると混乱しません。
| 施設 | 運営 | 入居一時金 | 主な対象 | 性格 |
|---|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム (特養) | 公的 | 原則不要 | 原則65歳以上・要介護3以上 | 終の住処。費用が安い代わりに条件が厳しい |
| 介護老人保健施設 (老健) | 公的 | 原則不要 | 要介護1以上 | 在宅復帰が目的。一時的な利用 |
| サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住) | 民間 | 原則不要 | 比較的自立〜軽度 | 住宅。安否確認と生活相談が基本 |
| 有料老人ホーム | 民間 | 0〜数千万円 | 幅広い | サービス内容も費用も施設ごとに大きく違う |
間違えやすい3点
① 老健は「ずっと住む場所」ではない
最も誤解されやすいのがここです。介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目的とした施設です。リハビリを受けて自宅に戻ることが前提のため、数か月ごとに入所継続の判定があり、長期間の入所を想定していません。
「特養の空きを待つ間に老健へ」という使い方をする方は多いのですが、そのつもりで入ると退所を求められて慌てることになります。最初から終の住処を探しているなら、老健は候補になりません。
② サ高住は「介護施設」ではなく「住宅」
サービス付き高齢者向け住宅で義務づけられているのは、安否確認と生活相談の2つだけです。介護サービスは含まれません。
必要になった場合は、外部の訪問介護などを別途契約する形になります。そのため介護度が重くなると住み続けられなくなることがあります。
サ高住を検討するなら、「要介護度がどこまで上がっても住み続けられますか」と必ず確認してください。看取りまで対応する施設もあれば、重度化すると退去を求める施設もあります。ここを確認せずに入居すると、数年後にもう一度施設探しをすることになります。
③ 特養は「要介護3以上」が原則
特養は費用が安く人気ですが、原則として65歳以上・要介護3以上という条件があります。要介護1〜2の段階では、特例に該当しない限り申し込めません。
待機期間は地域によって大きく異なります。都市部でも以前ほどの長期待機は減ったとされますが、地域差は依然として大きいのが実情です。「特養に申し込んだから安心」ではなく、待つ間の受け皿を並行して考えてください。
要介護度から絞り込む
| 状態 | 現実的な候補 |
|---|---|
| 自立〜要支援 | サ高住/住宅型有料老人ホーム |
| 要介護1〜2 | 介護付き有料老人ホーム/サ高住(介護対応のところ)/老健(在宅復帰を目指す場合) |
| 要介護3以上 | 特養が第一候補。待機中は介護付き有料老人ホーム |
| 認知症がある | グループホーム(認知症対応型共同生活介護)も選択肢 |
費用の見方
月額だけを比べると判断を誤ります。「入居一時金」と「月額」の組み合わせで総額が決まります。
- 公的施設(特養・老健)——入居一時金は原則不要。月額は所得に応じた負担軽減の仕組みがある
- 民間施設——入居一時金は0円から数千万円まで幅がある。近年は「前払金なし・月払いのみ」のプランも増えている
入居一時金を払う場合は、「償却期間」と「途中退去したときの返還額」を必ず確認してください。数年で償却され、早期に退去しても戻らない設計になっていることがあります。
また月額に何が含まれるかも施設ごとに違います。食費・管理費・おむつ代・医療対応が別請求になることがあるので、「毎月実際にいくら払うことになるか」で聞いてください。
よくある質問
- 特養に申し込みましたが、待機が長そうです。どうすればいいですか?
- 待つ間の受け皿を並行して探してください。特養は申し込み順ではなく、必要性の高さで優先度が判断される仕組みです。申し込んだだけでは、いつ入れるか読めません。
現実的な選択肢は、介護付き有料老人ホームに一時的に入居しながら待つ方法です。費用は上がりますが、在宅で介護を続けるより家族の負担が軽くなることが多いです。 - サ高住と有料老人ホームは何が違うのですか?
- サ高住は住宅、有料老人ホームは施設と考えると分かりやすいです。
サ高住で義務づけられているのは安否確認と生活相談だけで、介護は外部サービスを別途契約します。一方、介護付き有料老人ホームは施設のスタッフが介護を提供します。
自由度が高いのはサ高住ですが、介護度が上がったときに住み続けられるかは施設によります。ここを見学時に確認してください。 - 老健にずっといることはできますか?
- できません。老健は在宅復帰を目的とした施設で、数か月ごとに入所継続の判定があります。
「特養が空くまで」という使い方をする方は多いですが、老健側の判定で退所を求められる可能性があることは理解しておいてください。終の住処を探しているなら、最初から特養や有料老人ホームを候補にすべきです。 - 費用を抑えるにはどうすればいいですか?
- 公的施設(特養・老健)が最も安く済みます。所得に応じた負担軽減の仕組みもあります。
ただし特養は要介護3以上という条件があるため、誰でも選べるわけではありません。民間施設を選ぶ場合は、「前払金なし・月払いのみ」のプランを扱う施設が増えているので、一時金を避けたい場合は探してみてください。 - まず誰に相談すればいいですか?
- 地域包括支援センターです。市区町村ごとに設置されている公的な相談窓口で、無料で利用できます。
すでに要介護認定を受けているなら、担当のケアマネジャーが地域の施設事情をよく知っています。空き状況や、実際の評判といった情報は、こうした窓口のほうが正確です。
まとめ
4つの施設は名前が似ていますが、性格が違います。老健は在宅復帰が目的の一時的な施設、サ高住は介護施設ではなく住宅、特養は要介護3以上が原則——この3点を押さえるだけで、候補はかなり絞れます。
費用は月額だけでなく、入居一時金・償却期間・月額に含まれる範囲まで確認してください。そして探し始める前に、地域包括支援センターに相談するのが遠回りに見えて最短です。地域の空き状況は、パンフレットより窓口のほうが正確です。
参考・出典
- 厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索(介護サービス情報公表システム)」 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「地域包括支援センター」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
- 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」 https://www.satsuki-jutaku.jp/