親が亡くなった、あるいは施設に入った——そのあと残るのが「誰も住まなくなった実家をどうするか」という問題です。売る、貸す、解体する、そのまま持ち続ける。どれを選ぶかで数十万から数百万の差が出るうえ、判断を先送りするほど選択肢が減っていきます。本記事では、4つの選択肢を費用と期間で比較し、順番を間違えると損をするポイントを整理します。とくに「解体してから売る」は、やり方を誤ると税金が跳ね上がります。
まず決めるのは「残すか、手放すか」
細かい手順の前に、この一点だけ先に決めてください。ここが決まらないまま片付けを始めると、途中で手が止まります。
| 選択肢 | 費用 | 期間の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| そのまま売る | 仲介手数料 | 3か月〜1年 | 建物に価値が残っている/立地がよい |
| 解体して土地を売る | 解体費が先に出る | 半年〜 | 建物が古く、買い手がつかない |
| 賃貸に出す | リフォーム費 | 数か月〜 | 需要のある立地/管理を任せられる |
| 持ち続ける | 固定資産税・管理費が毎年 | — | 使う予定がある場合のみ |
誰も住まない家でも、固定資産税は毎年かかります。加えて庭の手入れ、通気、近隣への配慮といった管理も続きます。
さらに管理が行き届かず「特定空家」に指定されると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が最大6倍になります。判断を先送りすること自体にコストがかかる、という点を先に押さえてください。
順番を間違えると損をする3つのポイント
① 解体は「売り方が決まってから」
最も多い失敗がこれです。更地にしたほうが売れると思って先に解体すると、税負担が増えることがあります。
住宅が建っている土地には住宅用地の特例が適用され、固定資産税が軽減されています。解体して更地にすると、この特例が外れます。売却まで時間がかかると、その間ずっと高い税金を払うことになります。
不動産会社に相談すると、「古家付き土地」として売ったほうが有利なケースも少なくありません。解体を決める前に、まず売却の相談をしてください。
② 遺品整理と解体は同時に見積もる
別々に依頼すると、同じ物を二重に処分費として払うことになります。遺品整理業者が「残置物」として処分した分と、解体業者が「残置物撤去費」として計上する分が重複するためです。
解体まで進む見込みがあるなら、遺品整理の見積もり段階で解体業者にも声をかけてください。どこまでを誰が処分するかを整理するだけで、総額が変わります。
③ 相続登記は済ませておく
2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記する必要があります。
そして実務上、登記が済んでいないと売却も解体の補助金申請も進みません。名義が親のままでは、子どもが処分の当事者になれないためです。片付けより先に、ここを確認してください。
解体を選ぶ場合の費用
解体費は建物の構造と広さでおおむね決まります。
| 構造 | 坪単価の目安 | 30坪の場合 |
|---|---|---|
| 木造 | 3〜5万円 | 90〜150万円 |
| 軽量鉄骨 | 4〜6.5万円 | 120〜195万円 |
| 鉄骨・RC | 5〜7万円 | 150〜210万円 |
これに加えて、付帯工事(ブロック塀・庭木・カーポート)と廃棄物の処分費がかかります。「本体工事費だけ」の見積もりを見て安いと判断すると、後から上振れします。
多くの市町村に老朽空家の解体補助制度がありますが、ほぼ例外なく「着工前の申請・交付決定」が条件です。工事を始めてから申請しても受理されません。
また年度ごとの予算枠で、募集が数戸しかない自治体もあります。業者に発注する前に、市町村の建築指導課・住宅政策課へ相談してください。
進める順番
- 相続登記を確認・完了する——名義が親のままでは何も進まない
- 不動産会社に売却の相談をする——古家付きで売れるかを先に確認
- 解体する場合は、自治体の補助金を確認——着工前でないと使えない
- 遺品整理と解体をまとめて見積もる——二重払いを避ける
- 複数社から相見積もりを取る——解体も遺品整理も業者差が大きい
よくある質問
- 誰も住んでいない実家を、そのままにしておくのはだめですか?
- 持ち続けること自体は問題ありませんが、費用が発生し続けます。固定資産税に加え、庭の手入れや通気などの管理が必要です。
管理が行き届かず「特定空家」に指定されると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が最大6倍になります。使う予定がないなら、早めに方針を決めたほうが総額は抑えられます。 - 更地にしたほうが売れやすいのでは?
- そのケースもありますが、先に解体するのは危険です。更地にすると住宅用地の特例が外れ、売れるまでの固定資産税が上がります。
まず不動産会社に「古家付き土地として売れるか」を相談してください。買主が自分で解体する前提で購入するケースもあり、そのほうが手元に残る額が多くなることがあります。 - 兄弟で共有しているのですが、話が進みません。
- 共有名義の不動産は、売却も解体も原則として全員の同意が必要です。誰か一人が反対すると動けません。
話が進まない場合は、維持コストを具体的な数字で共有すると現実味が出ます。固定資産税と管理費が毎年いくらかかるかを示し、「持ち続ける費用は誰が負担するのか」を論点にすると、判断が前に進みやすくなります。 - 遺品整理と解体、どちらを先にやるべきですか?
- まとめて見積もってください。順番の問題ではなく、別々に頼むと処分費が二重になります。
解体まで進む見込みがあるなら、遺品整理の段階で解体業者にも声をかけ、どこまでを誰が処分するかを整理してください。貴重品や思い出の品を先に取り出しておけば、あとはまとめて処分できることも多いです。 - 相続登記をしていません。急ぐ必要はありますか?
- あります。2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内とされています。
それとは別に実務上の問題として、登記が済んでいないと売却も補助金申請もできません。名義が親のままでは、子どもが処分の当事者になれないためです。片付けより先に、登記の状況を確認してください。
まとめ
実家じまいで最も損をするのは、「とりあえず持っておく」という判断です。固定資産税と管理費が毎年かかり、特定空家に指定されれば税額が跳ね上がります。
そして順番が重要です。相続登記 → 売却の相談 → 補助金の確認 → 遺品整理と解体をまとめて見積もり。とくに解体を先に決めないでください。古家付きのまま売ったほうが有利なケースがあり、更地にすると税負担が増えます。まず不動産会社に相談してから判断してください。
参考・出典
- 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/index.html